コロナの影響で、外食産業がひどい落ち込みになっているというのがニュースになっている。
日本フードサービス協会のデータをひっぱってきた。
売上高の昨年対比の月別推移である。
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | |
全 体 | 104.8% | 82.7% | 60.4% | 67.8% | 78.1% | 85.0% |
ファーストフード | 109.8% | 93.1% | 84.4% | 90.7% | 88.2% | 96.4% |
ファミリーレストラン | 102.0% | 78.8% | 40.9% | 50.6% | 73.5% | 77.4% |
パブレストラン/居酒屋 | 94.5% | 56.7% | 8.6% | 10.0% | 39.9% | 47.2% |
ディナーレストラン | 97.4% | 59.5% | 16.0% | 28.5% | 57.0% | 65.5% |
喫茶 | 98.9% | 75.3% | 27.6% | 33.2% | 62.0% | 66.8% |
その他 | 86.5% | 61.7% | 49.8% | 67.9% | 77.1% | 87.4% |
これをみると4月がボトムで、だんだん上向いてきている。
街に人手が戻るのと連動して、月を追うごとに落ち込みが緩和されてきているのがわかる。地域による違いはあるだろうが、ロックダウンをせずに、重症患者や死者の推移にフォーカスした全体的な政策がある程度成果を収めているのかなとも思う。
業態別に見ると、パブレストラン/居酒屋はまだ5割以上の落ち込みだが、9割減の4月、5月に比べればだいぶ回復期に差し掛かっている。
ディナーレストランや喫茶もきびしい。これはコロナによる生活習慣や働き方の変化の影響も考えられるので、回復はまだまだ先かもしれない。ディナーレストランには、インバウンドの影響も大きいだろう。
定期的に通う青山の客単価2万円超でも超人気の小料理屋は、1か月以上先でも予約が取れないぐらいには予約状況が戻ってきているようだ。
緊急事態宣言以前のようにカウンターにお客をめいっぱいつめることはないが、そのせいで予約が取りにくくなった。
この商売における固定客の力をまざまざとみせつけられる。
結局、奇をてらった店や一見対象の店は壊滅的な打撃をうけているものの、1回で2万円出せる太客(質がいいとは限らない。怪しい商売の人間もいるだろう)が離れずに店にくる。
緊急事態宣言のときにも休業せず営業を続けていたが、そのときはさすがに貸し切りに近い状態になった。
予約だけ受けて、8時をすぎると他の目があるので、入口の灯りを落とし、シャッターを半分閉めて営業していた。
ふだんは大将とじっくり話をする余裕はないが、その時は違った。
逆張りが少し幸福な時間になったのを覚えている。だがそれもいまはほぼ平常運行になってしまった(お店のためにはよろこばしいことである。念のため)。
コロナ以降、外食の落ち込みの反作用として、家庭内の食需要が増えたという。
とくに緊急事態宣言下では、政府なども家庭での料理と内食を推奨していたので、有名シェフが手軽にできるレシピをyoutubeで公開していた。
家庭でできるように簡易的にというのはあるにしても、そこにお宝映像が潜んでいた。
まずは外苑前、イタリアンの「リストランテアクアパッツア」。
日高良実オーナーシェフ自らが、絶品パスタのつくり方を伝授。
これなどはイワシの丸物をつかって、本格的なシシリアンパスタのつくり方を教えてくれる。
コメント欄に、こんなの無料で公開していいの!というのがあったが、そのとおりである。
シェフがどういうマーケティング発想でサービスしているのかわからないが、プロのテクニック公開が半端ない。
もっと驚いたのは、中華の巨匠「銀座やまの辺 江戸中華」である。
麻婆豆腐といえば店の看板メニューの一つだと思うが、そのつくり方を、ここは秘密とかもったいつけることなく、余すところなく紹介している。
アクアパッツアもそうだが、客単価はやはりディナーで2万円ぐらいにはなる店である。
太っ腹である。
麻婆豆腐に使っている牛肉は、最高ランクであることもわかった。
材料に手抜きをしないのがどの店も共通している。
高い料理はびびるが、そこの領域で勝負する店には、価格を超えた快楽がある。

嘘がはびこる世界で掛け値なく本質で勝負する彼らの潔さとサービス精神には頭が下がる。それでも普段とかけ離れた高額では、ぼったくり?とついつい下衆の勘繰りをしてしまうが、ぼったくってもたかが知れている上に、すごい儲けにはならないだろう。なにより自らリスクを引き受けておいしいもので喜ばせているのだから、えらいものである。